君が好きと言ってくれるなら、なんだっていい
思い出す場所はどれもありえないくらい大切な場所で。

でも、歩けなくなるかもしれない俺がいていい場所ではなかった。



「お願いです。まだ、誰にも言わないでもらえますか?」



俺は医者に頭を下げた。

芸能界を続けたいからじゃない。
そりゃたしかに続けたいのはたしかだ。

でも、もしも俺が歩けなくなったせいで、芸能界を引退したら。
それを愛莉が知ったら気にするだろうから。
歩けなくなったのが自分のせいだと思い込んで、絶対に気にするから。
だから、それだけはいやだった。

そして、芸能界を去る俺にはなんの保証もない。
もう、ただの一般人になってしまうんだ。

本当なら、このまま愛莉と結婚だってしたいと思っていた。
この先も俺なら上手く芸能界でやっていけると、太鼓判を押してもらえたし、愛莉と離れたあの頃とはちがった。
< 181 / 193 >

この作品をシェア

pagetop