君が好きと言ってくれるなら、なんだっていい
「きみ、だれ?」



新年が明けて、兄貴からの連絡を受けた愛莉が息を切らして、病室に駆け込んできたとき。
俺は、愛莉のことだけを忘れた奴になろうと決めた。

こんな俺のこと、はやく忘れて欲しかった。
他のことを覚えているのに、愛莉のことだけを忘れた俺。

俺は俳優だから、気持ちのブレなんてみせなかったはずだ。
愛莉のまえでは必死に演じた。

愛莉のことを好きじゃない俺を。

愛莉が傷ついた顔をするたび「嘘だよ」って言いたかった。
何度も愛莉を受け入れてしまいそうになった。

でも、俺は演じてるんだと言い聞かせた。
俺はこのドラマの主役なんだと。



「あたしのせいでドラマが……」



そう言う愛莉に胸が傷んだ。
苦しむなら、好きじゃない俺を演じている意味がない。

こんなことなら、もっともっと突き放して、もう二度と会わなければよかったのに。

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