銀狼と緋色のかなた
緋色眼を持つ人狼に伝わる緋刀。

緋刀に切りつけられると、それを使った人狼に関わる全てのことを忘れさせることができる、との言い伝えがある。

そうやって、緋色眼の人狼の一族は、誰にも居場所を見つけられることなく生き抜いてこられたのだ。

かなたは、倒れている3人の男の腕に小さな切り傷を作った。

こうすれば、今回の空月とかなたに関する記憶は失われるはずだ。

「空月!大丈夫?」

かなたは慌てて、倒れている空月に駆け寄った。

「悪い。油断してこのざまだ。狼になってる時間が長すぎたからかな」

自嘲する空月の顔が痛みで歪む。左脇腹の傷は浅いようだが、じわじわと服の上まで血がにじんできている。

「空月、今から私の村にいこう。ここからは少し距離があるけど、今夜中にはたどり着けると思う。歩ける?」

「ああ」

苦痛に歪む顔に、無理矢理笑顔を浮かべて空月は立ち上がった。

空月の体を支えるようにしてかなたも寄り添い歩き出す。

二人がかなたの村にたどり着いた頃には、すでに深夜をまわっていた。
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