銀狼と緋色のかなた
ウォルの横で、かなたは久し振りにゆっくりと眠った。
両親と叔父夫婦が亡くなって以来、身を守る術を持たないかなたは、常に緊張状態にいたのだ。
狼であるウォルの存在は、かなたに大きな安心を与えた。
ウォルの暖かい毛皮もぬくもりが感じられて落ち着いた。
かなたは目を覚ました時、ウォルがいなくなっていることに気づいた。
「ウォル?」
再び、かなたの心に不安が襲ってくる。
のそのそと、ウォルが洞窟の入り口から入ってくるのが見えた。口には子供のイノシシをくわえているようた。ウォルは、それをかなたの前にポンと置く。
「くれるの?」
かなたは、ウォルを見つめ首をかしげながらいった。
ウォルは、素知らぬ顔で、臥せの姿勢になって耳をかきはじめた。
照れているのだろうか?
クスクスっと、かなたが笑った。笑うなんて何日ぶりだろう。両親を亡くしてからずっと笑顔を失っていたことに気がついた。
ウォルは未だに我関せずで、前足の肉球の間を噛んだりしている。
ウォルが自らイノシシを食べ始める気配は一向にみられない。
人狼とは言え、かなたはまだ人間の姿をしている。緋刀と火を起こす道具は持っているが、イノシシを捌くのは勇気がいる。
とはいえ、せっかくウォルが仕留めてきてくれた獲物だ。
その思いを無下にするわけにはいかない。
それに、かなたはここ数日キノコと山菜しか食べていなかった。
勇気を振り絞って、かなたは、イノシシを捌くことにした。
薪を集めてきて火を起こし調理をする。小型の調味料はいくつか鞄に入っている。
久しぶりの肉は贅沢な味がした。焼いた肉をウォルにもあたえてみる。ウォルは美味しそうに、かなたが与える料理を食べ続けた。
「意外と味にうるさいんだね。ウォル」
ウォルの頭をかなたは優しくなでた。
「ありがとう。ウォル。大好きだよ」
ウォルはくすぐったそうに目を細めて、ブルブルと首を振った。
両親と叔父夫婦が亡くなって以来、身を守る術を持たないかなたは、常に緊張状態にいたのだ。
狼であるウォルの存在は、かなたに大きな安心を与えた。
ウォルの暖かい毛皮もぬくもりが感じられて落ち着いた。
かなたは目を覚ました時、ウォルがいなくなっていることに気づいた。
「ウォル?」
再び、かなたの心に不安が襲ってくる。
のそのそと、ウォルが洞窟の入り口から入ってくるのが見えた。口には子供のイノシシをくわえているようた。ウォルは、それをかなたの前にポンと置く。
「くれるの?」
かなたは、ウォルを見つめ首をかしげながらいった。
ウォルは、素知らぬ顔で、臥せの姿勢になって耳をかきはじめた。
照れているのだろうか?
クスクスっと、かなたが笑った。笑うなんて何日ぶりだろう。両親を亡くしてからずっと笑顔を失っていたことに気がついた。
ウォルは未だに我関せずで、前足の肉球の間を噛んだりしている。
ウォルが自らイノシシを食べ始める気配は一向にみられない。
人狼とは言え、かなたはまだ人間の姿をしている。緋刀と火を起こす道具は持っているが、イノシシを捌くのは勇気がいる。
とはいえ、せっかくウォルが仕留めてきてくれた獲物だ。
その思いを無下にするわけにはいかない。
それに、かなたはここ数日キノコと山菜しか食べていなかった。
勇気を振り絞って、かなたは、イノシシを捌くことにした。
薪を集めてきて火を起こし調理をする。小型の調味料はいくつか鞄に入っている。
久しぶりの肉は贅沢な味がした。焼いた肉をウォルにもあたえてみる。ウォルは美味しそうに、かなたが与える料理を食べ続けた。
「意外と味にうるさいんだね。ウォル」
ウォルの頭をかなたは優しくなでた。
「ありがとう。ウォル。大好きだよ」
ウォルはくすぐったそうに目を細めて、ブルブルと首を振った。