銀狼と緋色のかなた
「かなた」

「,,,空月?,,,ああ、はるかとヒロトも無事だったのね。良かった」

空は晴れ渡り、青空に太陽がキラキラと輝いているのが天窓から見えた。ブラッディムーンの運命の月夜はいつの間にか過ぎ去ったらしい。

「ここは?」

かなたの質問に、ヒロトと空月が苦笑する。

「父が大切に祀っていたあの神殿の中よ」

はるかがかなたの疑問に答えた。

「村の神殿?入っちゃいけないって叔父さんが言ってたのに。それに鍵は?」

はるかは、かなたに首からぶら下げていた勾玉を見せ、かなたが倒れてからのいきさつを話して聞かせた。

「そう,,,。みんなが私を助けてくれたのね。ありがとう」

かなたはお辞儀をして3人にお礼をのべた。

「なに言ってるの。初めにかなたがこんな無茶をしなければ、私たちは未だに人狼のままで25才までにはきっと寿命を迎えていたわ。感謝するのはこっちのほうよ」

はるかが、かなたの額を手のひらでピシッと叩くと、思いの外大きな音が響いた。

「ハハ、お前の頭はいい音が出るな」

かなたは優しく微笑む空月の綺麗な顔を見つめた。

"ち、近い"

破壊力抜群のイケメン顔を近くで直視してしまい、かなたは改めて、自分が空月に抱き抱えられている状況にあることに気づいた。

「目だけじゃなくて顔も体も真っ赤だな」

「緋色眼じゃなくて、緋色のかなただね」

ヒロトもかなたの照れる様子をからかってくる。

かなたは勢いよく起き上がると、慌てて空月から体を離そうとした。

しかし、それを空月に引き留められる。

「やっと、人間としてかなたに向き合えるんだ。そんなに嫌がるなよ」

と、空月はかなたをぎゅっと抱きしめて離そうとしなかった。

どうやら、空月はツンデレなだけでなく、激甘銀狼のようだ。

「はいはい、ご馳走さま。空月は死にかけたはるかをずっと見ていたんだものね。離れたくない気持ちもわかるわ。また、明日ゆっくりと今後のことを話しましょう」

はるかは、ヒロトの腕をつかんで言った。

「そうだね。僕も少し疲れたよ。だけどこれだけは言わせてほしい。かなた、ありがとう」

ヒロトは、そういって微笑むと、はるかに続いて神殿を出ていった。

空月もかなたを促すと、その後に続いた。

神殿には、緋色に輝く神鏡が置かれ、4人を見守っていた。

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