銀狼と緋色のかなた
二人は丸太に並んで座ると、空に浮かぶ銀色の月を見上げた。

先程まで空にかかっていた雲はなくなり、満天の空に広がる星と月明かりが森を照らしていた。

「空月の家族はいないの?」

「いや、まだ西の街に住んでいると思う。俺たちは基本的に群れないから。両親は人間に紛れて仕事をしながら暮らしているはずだ」

そう言って、空月は水面に映る月に目を移した。

「かなたの家族は?」

「私の家族は、従姉が一人いるだけ。両親も叔父夫婦もこの間亡くなってしまったの」

かなたも水面に視線を移す。

「父と叔父、母と叔母はどちらも双子。血族結婚をしたら長く生きれないことはわかっていたんだけど、あえて双子同士で結婚したんだって。私達は緋色眼の人狼なの」

「とても綺麗な瞳だ」

空月はそっとかなたの頬を撫でた。

「空月も,,,綺麗な銀の瞳だね」

かなたは頬を赤く染めて俯いた。

「いとことは結婚しなかったのか?」

「従姉のはるかは女性だから結婚はできないよ」

かなたは苦笑しながら

「はるかは私より1つ年上で、去年、成人してすぐに、村を出ていったわ。生きているのかもわからない」

と語った。

かなたと初めて出会ったときの涙の理由が空月にはようやくわかった気がした。
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