拒絶された後の憂さ晴らし
頬を赤らめる目の前の男を屈服させてみたい。


アノ子を餌に近付く事が出来たら願ったり叶ったりだけれど、万が一、二人が付き合い出したとしても…

この男を私に屈服させられたら、それはそれで良いわ。


私がこの男の事を気に入っている部分はルックスしかない訳だし、他人に渡しても悔しくはない。


顔と経歴が良いだけの性格の悪いこの男を屈服させるだけで私の勝ちだし、大嫌いな女に屈服させられるなんて、この男にとっては最高の屈辱だろう。


「…分かったよ。本当に取り持ってくれるんだろうな?」


「約束する。明日の昼、社員食堂で会いましょう。昼食はいつもアノ子ととってるから。だいたい12時過ぎには居ると思う」


そう言い残し、喫煙所を去る。


添野が小さな声で「あぁ…」と返事をしたのが聞こえたが、振り向きもせずにドアを閉めた。


───次の日の昼休み、従業員食堂で昼食をとっていると図々しくも現れた添野がよそよそしく左斜め前の席に座った。


あの素っ気ない添野が本当に現れたのか?と半信半疑だったが、左斜め前に座る男の顔がほんのりと赤くなり、アノ子の事が余程のお気に入りなんだろうと直ぐに分かった。


「お疲れ様です…」


僅かに耳に入る程度の声で挨拶をし、チラリとこちら側を見る。


約束通りに添野のお気に入りのアノ子と一緒に昼食をとっていた私は、一先ず添野に話をかけた。


「お疲れ様です。珍しいですね、従食で会うなんて…」


「いつもはこの時間には昼食をとりませんから。たまたま手隙だったもので…」


嘘吐き。


アノ子が居るからと誘ったから来たくせに。


社交辞令も程々にして、単刀直入にと行こうか?
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