拒絶された後の憂さ晴らし
「添野さんがお話したいんだってー!お相手してくれる?私は食べ終わったら行くからさ!」


「えぇ?」


清楚なアノ子が驚いた顔をして箸を持つ手が止まり、箸で掴んでいたハンバーグの端くれが皿にポロリと落ちる。


かなり動揺している様だ。


アノ子は何も言葉を発さず、ハンバーグランチが乗っているトレーに静かに箸を置いた。


食べる事を止めて、小さく溜め息をつく。


添野はそんなアノ子の行動を知ってか知らずか、黙々と中華ランチ(今日は黒酢酢豚)に箸が進んでいる様だ。


突如として、好きでもない相手と訳も分からずに二人きりにさせられたら、私も躊躇してしまう。


アノ子は今、心の中で葛藤しているのだろうか?


添野は迷惑がられているのだろうか?


迷惑がられているのなら、私には好都合なのだが…。


お近付きになる前に嫌われれば良い。


いつもみたいにクールぶって、素っ気ない態度を取り、顔も見たくない程に嫌われたら良い。


邪心は心の中を駆け巡る。


私の事を否定した上に拒絶したのだから、添野自身も傷ついたら願ったり叶ったりだ。


そんな邪な思いを胸に秘めつつ、私は急いで食べ終わり席を立った。


「ごゆっくり」、アノ子に悪いと思いつつ、一言だけ残してトレーを持って歩き出す。
< 4 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop