拒絶された後の憂さ晴らし
「海外転勤中だけど、用事があって一時帰国したんだ」


「そう、なんだ?…仕事だから、また、ね」


何を話したら良いのか分からずに『またね』と言って立ち去ろうとしたけれど、また会う機会なんて無いだろう。


動揺から可笑しな事を言ってしまった。


「モモ…真面目なんだね。昔みたいにサボったりしないの?」


「…しない」


以前、この男と付き合っている時は、この男の都合に合わせて仕事をズル休みして1日中、抱きあったりしていた。


友達から電話がくれば、私を捨てて、約束していた日でもすっぽかされた。


それでも、この男にしがみついていたのは寂しさからだったかもしれない。


地方から上京して来て、知り合いも少なく、この男にしか頼れなかったから。


今は友達だって居るし寂しくなんてない、でも物足りなさはある。


愛情が欲しいと身体が欲している。


「まだタバコは止めてないんだね?」


「…うん。今じゃヘビースモーカーに近いよ」


「むせりながら、俺に合わせて吸ってただけなのに?」


「………そうだね」


興味本位で吸い始めてしまった煙草は、この男の海外転勤が決まってからは寂しさを補う為の道具と化していた。


その流れで喫煙所に行く度に、寂しさを紛らわせてくれる男を誘い出す道具になってしまった。
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