妖怪少女、現世へと参ります。
零 常世に迷い込んだ少年
「……ここは何処?」
「……おや、また人間の子が……」
桜が咲き誇る、ある春の日の事。
常世で最も栄える都……妖都にて。
私は、ある少年と出会った。
大きな桜の木の下で、辺りをきょろきょろと見渡す少年。
あのまま放置したのなら、飢えた妖怪に喰われる。
私は道から外れ、彼の元に歩く。
「……貴方は、ここには来てはいけない者ですよ?」
「……わっ!?え、尻尾……耳?」
少年の後ろから声をかけたなら、彼は酷く驚く。
そんなに驚かれると少し悲しいけど、仕方ない。
振り向いた彼は、不思議そうに私の尻尾と耳を交互に見つめていた。
やはり人間にとって、妖怪の姿は物珍しいのだろうな。
「貴方は何故ここに迷い込んだのです?」
「……えっ?」
私の問いに目を丸くする少年。
訳が分からない、という顔。
まだ幼い少年には、質問の内容が難しかったかな?
「……では、いつ頃此処に?来たときの事を覚えておりますか?」
質問を変えてみると、少年はゆっくりと話し出す。
「……えっ……と。
来たのは、ほんとにさっき……来てすぐにお姉さんが声をかけてくれたから。
……神社で遊んでたら、急に体がふわってなって……。
気付いたら、此処にいたの」
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