妖怪少女、現世へと参ります。
《青葉へ
"大嶽丸"の事件の事は、既に知っていますか?
知っていたなら情報を教えてください。
知らないなら、私たちの持つ情報を伝えるのですぐに返事をお願いします。
久々の手紙なのにこんな内容ですみません。
お返事待ってます。
咲良》
「……手紙よ、青葉の元へ」
私がそう呟けば、手紙は姿を消した。
言霊、それが私の能力の1つだ。
大抵の妖怪は言霊を使えるが私は、並の妖怪以上に言葉を操れる。
「……青葉さんへの手紙ですか」
薫が言霊を使った私に気付き、そう呟いた。
彼の顔はかなり険しく、普段のふわふわとした優しそうな顔の面影が薄い。
杏子も、普段は何か話していないと死ぬのかというくらいうるさいのに無言。
眉を潜め、遠くを見つめている。
「……えぇ。青葉の事です。この事態を知らなくてもおかしくないと思いまして」
「さすがに青葉さんでも知ってるとは思いますが……」
"天狗"の妖怪、青葉。
自由気ままで常世にいる間は常にプカプカと空を飛んでいた、私の幼馴染みの様な存在だ。
実際は青葉は私よりずっと年上だけど。
……彼は噂話や世間話に疎い。
何回彼の世間への興味の無さに引いたか分からない位だ。
そんな彼の事だ、知らなくても不思議じゃない。
私はぼんやりと、顔を出した月を見つめていた。