妖怪少女、現世へと参ります。

とんでもない依頼


「咲良さん!大変です一大事です!!」

「薫、落ち着いてください……」


というか、"大嶽丸"関連以外で一大事と言えることなんて今あるのかな……。


あの"大嶽丸"事件から早1週間。

杏子は既に働き先の新聞会社でひたすらそれ関連の記事を書いていて。

うちの便利屋も、それに関しての依頼が多かった。

……現世に住む家族や友人の安否を確認してほしいという依頼が大半だったけど。

薫と手分けしてひたすら、書いてもらった手紙を言霊で送るのはかなり疲れた。

今日は元々の定休日、ゆっくりと休んでいたというのに。


事務所に飛び込んできた薫の顔は酷く焦っているようだ。

下手したら1週間前より焦ってるんじゃないかな。


「……これ!店先の郵便受けに入ってたんですよ!!」

「……郵便受けに?」


薫の持つ手紙を見て、眉を潜める。

……常世にとって郵便受けなんて飾りみたいな物で、大抵言霊で直接手紙のやり取りをする人がほとんど。

常世には郵便局的な組織も存在しないのに。


こういうときは大抵、姿形の無い妖怪からの依頼か……悪戯か。


それを知っていた為身構えている。



「……薫、もうその手紙の中は見たのですね?」

「えぇ。普段からそういう処理をしているので……って早く見てください!」


差し出された手紙を受け取り、開く。

……手紙の文字を追うほど、私の驚きと戸惑いは大きくなっていく。
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