妖怪少女、現世へと参ります。
「と、とりあえず薫。詳しく説明してください」
私じゃないの!?と叫ぶ杏子は無視して、薫に問いかける。
薫は深呼吸し、話し出した。
「現世で、何らかの原因で"大嶽丸"に施された封印が解けたようです。
自由の身になった"大嶽丸"は……天候を荒らしたり人間に危害を与えたりと暴れているようで。
数人、"大嶽丸"の加えた危害により命の危機に晒された者もおります。
現世の"狼男"仲間からの情報ですので間違いないかと」
……なんと厄介な事に。
私は少し落ち込んでる杏子にも問いかける事にする。
「杏子は?薫と持ってる情報は同じですか?」
私の問いに、杏子は顔を上げる。
その顔には不安の色が濃くにじみ出ていた。
「……そうね。私も現世にいる記者仲間から聞いたから……。
今現世では雷雨が続いているわ。仲間から聞いたところ"大嶽丸"の封印が解けたのはつい最近。
この短時間でかなりの被害が出ているから……長期化したものなら現世が大変な事になるわよ」
……普段気ままな薫や杏子の焦りよう、更に私の持つ知識を合わせてしまえば呑気でいれる状況じゃない。
状況を整理すればするほど、焦りが濃くなっていく。