月と薔薇のプレリュード








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最近、頻繁に夢を見るようになった。







いつも同じ夢ではないけど、共通しているのは、あたり一面が雪景色で必ず夢の中は月夜。








なんでだろう。


そんな夢を見た日の朝は、どうしようもなく泣きたくなって、どうしようもなく寂しかった。







…だけど、今そんな感傷に浸っている場合じゃない。








「やばいやばいやばい!」







階段を駆け下りて、玄関へ直行。






無造作に並べてあるローファーに足を突っ込んだところで、






「あ、花音(かのん)! 朝ごはんは!」





出勤前のスーツ姿のお父さんが、慌ててバタバタとリビングから走ってきた。








「時間ないから食べない!遅刻する!」

「朝食抜きは身体に悪いぞ〜」

「うう、分かってる」







顔をひそめながら、ネクタイを結んでいるお父さんに向かって、肩を竦める。


でも、すでに時計の針は8時を指していて。確実に次の電車逃したら、遅刻だ。





食パンくわえながら登校する少女漫画あるけど、あれって凄く器用だと思う。


走りながら食パン食べるなんて無理だもん。


息苦しくなりそうだし、噎せた時用に牛乳を片手にしてないといけないし。








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