月と薔薇のプレリュード









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学校の最寄駅に着いて、時間を確認すれば、朝のホームルームまであと8分ある。





よかった、と安心して、早めていた足の速度を緩めた。






頬に当たっていた風が弱まって、秋の匂いが強まった。



紅葉した並木道を歩くたびに、落ち葉を踏む音が耳に残る。








11月になって一気に冷え込んだせいか、ちらほらとマフラーを巻いている人が目に入って、

もうそんな時期かぁ、と衣替えのことを考えていれば、







「かーのんっ! おはよ!」





ドンっと思い切り背中を叩かれて、返事をしようにも噎せてしまう。






「ゆ、柚菜…朝から元気ね…」




カラカラと無邪気そうに笑う柚菜(ゆずな)に、おはようと返しながら苦笑いを向ける。






「そうよ、この寒さになんて負けてられないわ。今日の放課後はソフトボールの練習試合なんだから!」





ブンブンと腕を振り回す彼女は、女子ソフトボール部のエース。



中学の頃から部活一筋の根っからスポーツ少女で、いつも元気でパワフル。



11月なのに長袖を捲っていて、そこから覗く肌は夏の間にじっくりと焼かれた健康的な小麦色。






「風邪、引かないようにね」

「だーいじょうぶ」





「馬鹿は風邪引かないもんな」





不意にひょこっと真(しん)が姿を現して、ケラケラと笑う。




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