月と薔薇のプレリュード







「イケメン!?イケメン!?イケメン!?」

「3回言わなくていいよ」



何故だか面白くなさそうな表情をしている真が、冷静に突っ込んでいるけれど、

柚菜さんの耳には入っていない模様。



面喰いを極めた面喰いだからね、柚菜さんは。




「うーん、あまり覚えてないけれど…イケメンになってるかなぁ…わかりかねます」

「なんでそこだけ丁寧語なの」




またもや真の突っ込みが飛んできて、あははと肩を竦める。


そっか、でも無意識のうちに、他人にも分かるほどの’’楽しみオーラ’’が出ちゃっていたんだ。




楽しみだけれども、実は緊張も半分ある。


だって、3年ぶりだなんて一体なにを話せばいいんだろう。

今更になって、3年がいかに長い空白の時間だったか実感が湧いてきた。





「一ノ瀬〜」




不意に入り口付近から同じクラスの男子生徒に真の苗字が呼ばれて、

私たち3人は一斉にそちらへ視線を向ける。




「なんか隣の女子が呼んでる」

「…わかった」




真が返事をして、「わり、行ってくる」と言った瞬間、



「もしかしての〜もしかしての〜、こ・く・は・くっ」



柚菜が盛大にニヤけながら囃し立てる。

語尾にはハートマークがつきそうな勢いで。




口元のニヤけを手で隠そうとしているらしいけど、隠しきれていなくて、明らかに挑発しているとしか思えない。


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