主任とルームシェア始めました


「乾杯。」

河谷主任はビール、私は酎ハイを喉に流し込む。

直後に私の携帯が鳴る。

ディスプレイに『哲平』の文字

「イヤ!!!」

私はテーブルに携帯を投げ出して触る事もできなかった。

主任は私の携帯を拾って、

「見るのも辛いなら、着信拒否するぞ。」

と言った。

私は、こくこくと頷く。

主任は、私にロックだけ解除させると、着信拒否の設定をしてくれた。



主任が私の震える肩を抱いて落ち着かせてくれる。



しばらくして、落ち着くと、

「じゃ、改めて今度こそ、乾杯!」

と主任が缶ビールを私の酎ハイに合わせてきた。

連日の疲れが溜まっているから、あっという間に酔いそうだ。

「で?
何があった?」

いつも口が悪い河谷主任の声が優しい。

私は、昨日からの事を泣きながら吐き出した。

「俺と仕事、どっちが大事だ、なんて、普通、
女子のセリフだと思いません?
誰も好きでこんなに残業してませんよ。」

「あいつ、そんな事言ったのか。
佐藤はこんなにがんばってるのに。」

そう言って、また私の頭をわしゃわしゃ撫でる。

「主任、やめてくださいよ〜。
頭、ボサボサじゃないですか〜。」

私はボサボサの頭を手櫛で一生懸命整える。

「しかも、哲平、主任の話をちょっとでも
すると、めっちゃ怒るんですよ。
私が普通にその日の出来事を話そうとしたら、
ずっと一緒にいる主任が登場するのは仕方ない
じゃないですかぁ。
そんなんで怒られるなんて、理不尽だと思い
ません?」

「はははっ
あいつ俺とお前がなんかあるって疑ってる
のか?」

「疑ってるっていうより、私が四六時中
イケメンと一緒なのが、気に食わないって
言ってましたよ。
そんなの私のせいじゃないっつうの!」

「そうか、そうか。
まったく、しょうがない奴だな。
俺の大事な佐藤を泣かせるなんて。」

と言って、今度は私の頭を優しく撫でる。
その手がとても気持ちよくて、されるがままになっていた。

私の記憶があるのは、そこまで。

その後、どうしてこうなる?


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