主任とルームシェア始めました

金曜 19時。

私たちは1階エレベーターホールで待ち合わせた。

有村くんは、品川駅近くのスペインバルのお店を予約してくれていた。

会社の人に会いやすい田町を避けてくれたのは、有村くんの優しさだろう。


「乾杯」

私たちは、ビールで乾杯し、料理をつまむ。

初めは、仕事の事や芸能ニュースなど、取り留めのない話をしていたんだけど、

「噂で聞いたんだけど…」

と有村くんが切り出す。

「大野と別れたんだって?」

「うん。
そんなに噂、広がってるの?」

「まぁ、佐藤は有名人だし。」

「え?
なんで?
私、なんかやらかした?」

「お前、気づいてないの?」

「何が?」

「あー、
だったら、知らないままでいいよ。」

「えー?
気になるじゃん。」

「………
俺は言わない。
知りたかったら、他の奴に聞いて。」

「???」

こうなったら、有村くんはテコでも言わないだろう。

「佐藤は、もう、吹っ切れたのか?」

「うん。
もう大丈夫。
心配してくれてありがとう。」

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ………

携帯がなった。

「ごめん、ちょっといい?」

と言って、席を外し、電話に出た。

「はい。」

『遥? 今、どこ?』

「品川のスペインバル」

『分かった。じゃあな。』

「はい」


< 45 / 141 >

この作品をシェア

pagetop