主任とルームシェア始めました
私は更衣室で制服から私服のスーツに着替えて、けいちゃんを待った。
「遥、帰るぞ。」
けいちゃんの声がしたから、私は鞄を持って更衣室を出た。
「けいちゃん。」
私がけいちゃんの横に立つと、けいちゃんは私の腰を抱いて歩き始めた。
いつもなら優しく添えてくれるその手に、今は力が入っていて、けいちゃんの心の葛藤が現れているみたいだった。
2人でエレベーターに乗ると、けいちゃんの力が少し緩んだ。
「ごめん。」
けいちゃんが言った。
「ん?
何が?」
「昼に遥に嫌な思いをさせた。
今もかなり大人気なかったと思う。」
うなだれるけいちゃんが、とてもかわいい。
5歳も年上の男性を捕まえて、『かわいい』はないのかもしれないけど、けいちゃんはやっぱりかわいい。
「ふふっ
気にしてないよ。
私が好きなのはけいちゃんだけだし、
けいちゃんが好きなのは私だけでしょ?」
そう言うと、けいちゃんは目を見開いた後、私を抱きしめた。
「けいちゃん?
ここ、エレベーターだよ!?」
私が言い終わる前にエレベーターは1階に着き、2人抱き合った状態でエレベーターの扉が開いた。
エレベーターホールには、ちょうど出先から戻った部長と課長がいて、
「新婚なのは分かるが、ここは会社なの
だから、もう少し節度ある行動を心掛けて
もらいたいものだな。」
とお小言をいただいた。
「すみません…」