恋が枯れるまえに、約束を
*
「ねえ、あれ……」
「え!牧野真衣じゃない??」
周囲はこそこそと探り騒めき
一点の彼女だけを見つめていた。
「あ、いたいた」
「……」
しかし彼女がこちらに手を振りにこりと笑うと、
ついには自分まで注目を浴びる羽目になった。
ここで2セットは色々まずいでしょ。
本来なら、ここでもっと人気モデルの自覚はないのかと一つ言ってあげるべきなのかもしれないけど、彼女の場合、それすらも策士なのではと思う。
「おまたせ、柊」
「……」
「どうしたの?」
「もっと変装出来なかったの?」
「えー、それが久しぶりに会った
彼女に向けて言うセリフ〜?」
久しぶり……ね。
そう言って彼女は妖しく笑うと、俺たちは
人通りの少ない商店街に向かった。
向かう途中に、たまたま遠目で雨寺達を見かけ、
まずいなと思い一度トイレに行くふりをして
竹内に電話をかけた。
相変わらず、歓迎会の日以来竹内とは
なんだかギクシャクしがちである。
まあ、いんだけど。
判断的には間違っていないと自分に言い聞かせれば戻ってくると、真衣は不服そうにこちらを睨みつけた。