恋が枯れるまえに、約束を
何から何までツイていない、そう思えば、
心が沈んでしまった。


「……そんな分かりやすく落ち込むなよ」


私の表情を見て察したのか、うなじを手で
押さえながら、先輩は応えた。


「どこか怪我してない?
これどこに運ぶの?」


印象を悪くさせてあっさり帰ってしまうと思ったのに、むしろ先輩に気を使わせてしまう。


「い、いえ、申し訳ないです。
大丈夫ですから…」


「場所、分かるの?」


「…」


「やっぱり」


図星をつかれると、一度手渡した資料をもう一度先輩は取り上げると、スタスタと私の先頭を歩いて行ってしまった。


感謝する気持ちよりも、申し訳なさが大きくて、
おどおどしてしまう。


そんな私に先輩は「怒ってないよ」
と振り返り様に言った。


そんなに自分は顔に出るくらい
怯えているのだろうか。


「だからおいで」


先輩は再び困ったように笑いながら
そう言ってくれた。


本当は人見知りで、人と話すのには緊張してしまう私だけど、ここまで言われて何が怖いのだろう。


先輩の優しさを二度も振り払う
なんて、そんなの失礼だよね。


私はコクリと頷く。


それを確認すれば、先輩はほっとして、
また笑ってくれた。


そんな先輩の大きな背中を、私は
見失わないようについて行ったのだ────。

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