恋が枯れるまえに、約束を
*
「はい、到着」
そう言って着いた場所は、
微かに見覚えがあった。
「あれ…ここさっき………あ、」
やだ…、見落としてたなんて。
はやくこの場から出たい一心で
どんどん奥に進んでしまっていた。
「それ、さっちん(佐々木)に頼まれたやつ
でしょ?だからここだと思った」
さっちん……。
なんて愛嬌のある呼ばれ方
なのだろう。
そんな事を思いながら、私は深々と
頭を下げお礼した。
「ありがとうございます」
「いいえ」
あのままずっとまっすぐ進んでいたら、
お昼休みが無くなってしまう所だった。
ようやく雑務から解放され、先輩ともここで
失礼しようとまた一つ会釈する。
「本当に助かりました」
今度はしっかりと礼儀良く。
「もう迷んなよ、雨寺」
よし戻ろうと、私は踵を返そうとしたのに、
その言葉がそれを止めさせた。