恋が枯れるまえに、約束を
「え?」


どうして……。


「名前、教えてないのに…」


少し驚きながら、ぼそりと呟けば、
先輩はさらに加えるように応えた。


「またの名は、招き猫さん」


「え?招きね……はい??」


「あはは、それは分かんないか。
割と有名だよ、裏庭の招き猫」


裏庭……、


「っ!」


聞かずとも、裏庭で猫と戯れている生活を送っていた自分には合致する異名で、ああ、私だと思った。


「誰が付けたんだろう…」


「さあ」


恥ずかしい……っ


「たまに猫と話してたり…ね?」


「ッ!?」


畳み掛けるように次から次へと
羞恥心を煽ってくる。


「なっ…な…ッ」


「裏庭って教室の窓から見えやすい
位置なんだよ」


「え、え~~~~っ」


知らなかった…。


「絶対変な人だと思われた…」


知らず知らずに穴場になっていたその場所
は、どうやら人の視界に入りやすいようで。


それを知ってしまったら、今後
行きづらくなってしまった。

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