恋が枯れるまえに、約束を
「チョコレート?」


それは一口サイズの、
少し苦めのチョコレート。


ピリリと袋を剥がし、先輩は「食べな」と言って
チョコレートを私の口に持っていく。


素直にそれを許せば、口の中いっぱいにほろ苦いチョコレートの味が広がった。


「このまま別れたら後味悪いだろ」


そう言いながら、また、先輩は
困ったように笑うのだ。


優しいだか、意地悪なんだか。


「…ほうさせたのは先輩れす」


カランコロンと飴のように転がして少しずつ溶けながら味を楽しみつつ、ちゃんと抗議も忘れない。


でも、まあ…


「おいひーれす」


「よかった」


あまりにも先輩はよく笑うものだから、
拍子抜けしてしまう。


きっとこういう人に、
人が集まってくるんだと思った。


それにひきかえ私は名前すら
覚えてもらえているかも危うい…。


…ただ、静かに漂っているだけ。


自分で自分を落とし蔑めば、
再び深い深いため息が溢れた。

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