恋が枯れるまえに、約束を
私はもっと冷めている性格なのだとばかり
思っていたから…。


案外私は怒りっぽいんだって、
なんだか安心した。


変なの……。


思いながら私は、つい1人で
小さく笑った。


そんな私に先輩は先程のような強引な
撫で方ではなく、優しく頭を撫でた。


不思議とそれは嫌ではなかったけど、
やっぱり恥ずかしかった。


「雨寺」


「な、なんですか」


飄々としていた様子からは打って変わり、本当に優しそうに私を見つめ名前を呼ぶものだから、ついどきりとしてしまう。


「俺らお互いをよく知らないけどさ、
あんまり我慢すんなよ?」


「え?」


あまりにも唐突に、そしてズシリと響くその言葉は、図星とは違う、なんとも形容しがたい気持ちに駆られた。


そんな戸惑う私を置き去りにして、
先輩は言葉を続ける。


「偽って自分を忘れるくらいなら、
無理して相手に合わせなくていいんだよ」


「!」


「今は自分に馴染めない場所かも知れないけど、いつかそれが居心地がいい。って思える場所になってればいいね」



「─────…」


なんでも見透かされているようだった、
なんでも見据えているようだった。


でも、その言葉は確かに私を
満たしていた。



ああ────、


〝その一つは大きんだぞ〜?〟


本当だね。


私と先輩の一つの差は
大きすぎた。


本当に、



彼は先輩なんだ─────…。

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