恋が枯れるまえに、約束を
福岡から東京、新幹線で約片道5時間、友達に会いに行くにもこの距離じゃあ、あっちに知り合いすらいない。


全てが頼りなかった。


きっとそれはお兄が一番思っている事で、もう立派な大人、とは言い難く、つい最近までは高校生だったのだ。


そんなお兄が私の面倒すらも見て、急に都会にのめり込む事になるのだから、不安でしょうがないだろう。


だがしかし、私も故郷を出るからにはもう引きこもる訳にはいかない。


幸い、私も次の中学の行く当てが出来たので、そこに転校することになった。


新しい場所、新しい家、新しい学校、
なにもかも、1からスタートするんだ…。


その事に胸の高鳴りや、好奇心なんてほとんどなかったと思う。


ただ正常に、ほんの少し不安で。



…そう言えば、“彼も”今頃は東京
にいたのだろうか。



「…」


まさかこんな事になるなんて──。



───私は、



新しい生活を送れば、彼を忘れられるだろうか?



もう誰の手も煩わせずに済むだろうか?



そんな事に浸る私と、ただ頬杖に窓の向こうを眺めるお兄の身体には、茜色の夕日が、白く純白な私たちを真っ赤に染めた。

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