恋が枯れるまえに、約束を

……



「じゃあまた明日」


「うん、ばいばい」


偶然にも、私たちは同じ地区で、理沙の方が私の
別荘よりも手前にあった。


理沙が家に入っていくまでを見送り、私も
早く帰ろうと足を進ませれば、電話が鳴る。


〜〜♪


着信の相手はもちろんお兄で。


私はケータイを耳に当て、応えた。


「ごめんお兄、もうすぐ帰るよ」


〔…はあ〕


ケータイの方から聞こえるお兄のため息で
察するに、少々ご立腹の様だった。


〔遅くなるなら遅くなるってメールの1つくらい
よこしなさいよ〕


「ご、ごめんなさい…」


〔まあいいや、早く帰っておいで〕


それだけいい残せば、一方的に
電話を切られた。


と言っても、本当にもう5分程で別荘に着いてしまうものだから、ならば電話がかかる前に帰宅しておけばよかったと思った。


そう考えているうちに、もう別荘に着いた。


玄関の扉に手をかければ、
案の定鍵はかかっていない。


お兄…、また鍵掛けっぱなしにして。


毎度毎度親代わりのように私を叱り付ける
お兄だが、彼もまた、所々抜けていた。


不用心だなあ…。

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