恋が枯れるまえに、約束を
*
それから、時刻はあっという間に18時を
過ぎると、午後の練習が終わった。
みんな各自後片付けに入れば、今日はどこに行こうかとか、肉がいいだとか、そんな話がちらほら聞こえた。
「伊織ちゃんは何が食べたい?」
そんな中、佐藤先輩は私にそう
問いかける。
「私ですか?…んー、特には…」
ここは控えめに、選択肢を投げると、
伊月先輩が会話に入ってきた。
「今日のメインは雨寺なんだから、
少しくらい甘えときな」
「──…、」
〝あんまり我慢すんなよ?〟
何となく、いつぞやの先輩の言葉を
思い出し、今の台詞と重ねた。
我慢してるとか…思われてるかな。
別にそんなつもりはないけど、彼も何気なく出た
言葉に違いないだろうし。
「何食べたい?」
……。
なぜかここで初めて自分のための
歓迎会である事を改めて実感した。
それと同時に、いいのかな。なんて。
なんか少し照れる…変なの。
「お好み焼き…」
そう思いながらも、私はそう応えれば、
みんなは賛成してくれた。
「よっしお好み焼き!」
「行きつけの場所を先輩が
教えちょる!」
特に部長が本当に楽しそうに言うもの
だから、つられて笑ってしまった。
「よかったね、伊織」
「うん、ありがとう」
「いえいえ」
温かく優しい空間に包まれた感覚に胸が
キュッとなって、気恥ずかしさを覚えた。
この感覚はじわじわと来るから苦手だ。
……でも、嫌ではなかった。