恋が枯れるまえに、約束を

side理沙





「大丈夫だよ」


伊織はそう言って、私たちに気を遣い
その場を後にした。


彼女を除け者にしたようで苦しかった、手を伸ばしたかったのに、それが出来なかった。


でも、伊織がその場を後にしてくれた事で、
心底安心してる。


……矛盾してる。


私は横にいる伊月先輩の手をちらりと見ると、
少しだけ赤くなっている事が分かった。


「ごめんなさい……伊月先輩」


私は申し訳なさそうに謝れば、
伊月先輩は笑って言った。


「いや、お前が正しかったよ」


───と。


「…っ」


あの時、2人の光景に体がビビッと
電流が流れたみたいにゾッとした。


そして気がつけば、私は先輩の手を
振り払い、伊織…いや、みんなを
怖がらせてしまっていた。


あの時は本当に周りが見えなくなるほど、
自分はどうかしていた。


…頭の中で警報のようなものが、
鳴った気がした。



───伊織を守らないと───



カッと湧き立ち真っ白になった自分の
思考は、唯一それだけを全うしようとした。


でもだからって、あんなやり方…ッ


もっと上手くできなかったのだろうか、もっと自分が冷静に対処できればと、そればかり今になって後悔している。


私は悔しそうに俯けば、佐藤先輩は
背中をさすってくれた。

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