恋が枯れるまえに、約束を
side理沙
*
「大丈夫だよ」
伊織はそう言って、私たちに気を遣い
その場を後にした。
彼女を除け者にしたようで苦しかった、手を伸ばしたかったのに、それが出来なかった。
でも、伊織がその場を後にしてくれた事で、
心底安心してる。
……矛盾してる。
私は横にいる伊月先輩の手をちらりと見ると、
少しだけ赤くなっている事が分かった。
「ごめんなさい……伊月先輩」
私は申し訳なさそうに謝れば、
伊月先輩は笑って言った。
「いや、お前が正しかったよ」
───と。
「…っ」
あの時、2人の光景に体がビビッと
電流が流れたみたいにゾッとした。
そして気がつけば、私は先輩の手を
振り払い、伊織…いや、みんなを
怖がらせてしまっていた。
あの時は本当に周りが見えなくなるほど、
自分はどうかしていた。
…頭の中で警報のようなものが、
鳴った気がした。
───伊織を守らないと───
カッと湧き立ち真っ白になった自分の
思考は、唯一それだけを全うしようとした。
でもだからって、あんなやり方…ッ
もっと上手くできなかったのだろうか、もっと自分が冷静に対処できればと、そればかり今になって後悔している。
私は悔しそうに俯けば、佐藤先輩は
背中をさすってくれた。