社内恋愛狂想曲
そう思って断ろうとしたけれど、奥田さんはキラキラ目を輝かせて、足はすでに半分フルーツパーラーの方へ向いている。

よほどそのフルーツタルトが食べたいらしい。

おそらく彼女は護の付き合っている相手が私だと知らないから、悪びれる様子もなく休日に偶然会った私に声を掛けてお茶に誘ったりするのだろう。

つい数日前は憎らしくて許せない相手だったはずなのに、護と別れると決めたらなんだか少し気が抜けて、だんだんどうでも良くなってきた。

「……そうね、行きましょうか。ちょうど甘いものが食べたいと思ってたの」

「ハイ、行きましょう!」

嬉々としてフルーツパーラーに向かう奥田さんは、いつもに増して男受けしそうな可愛らしい格好をしている。

これが計算ずくでそうしているのか、逆に狙わずともそうなる天然の才能なのかはわからないけど、通りすがりの男性がチラチラと奥田さんの方を気にしているところを見ると、やはり彼女は異性にモテるという結論で間違いないのだろう。

フルーツパーラーに入るとオープンテラスと店内の席のどちらがいいかと尋ねられた。

若い奥田さんはきっとおしゃれで明るいオープンテラスが良かったのだろうけど、彼女ほど若くはない私は人目や紫外線が気になるので、店内の奥の方の席を希望した。


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