社内恋愛狂想曲
少々面倒ではあるけれど気兼ねなく好きなものを食べたいので、フルーツタルトを注文しない理由を正直に話すことにする。

「いろんな種類の果物がいっぺんに乗ってるのは好きじゃないの。組み合わせが苦手なのかな。ひとつひとつは好きなんだけどね」

「へぇ……珍しいですねぇ。私はいつもこの店ではフルーツタルト頼むんですよ」

ずいぶん一途だこと、と思わず皮肉を言いそうになったけれど、これこそ本当の嫌味になってしまうと思い慌てて口をつぐむ。

「こんなにたくさんメニューがあるのに、いつも同じものなの?」

「大好きなんです!私、なんでも好きになるとそればっかりになるくせがあって」

「ずいぶん一途だこと……」

言うつもりはなかったのに、無意識のうちに口が動いてしまった。

深い意味はないと見せかけるため、できるだけ自然な流れで店員を呼ぶ。

奥田さんはフルーツタルトとダージリンティーのセット、私はイチゴとプリンのパフェとホットコーヒーを注文した。

それでさっきの一言は忘れてくれたかと思ったのに、奥田さんは神妙な面持ちで大きなため息をついた。


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