社内恋愛狂想曲
瀧内くんの性格だと二股なんかしないと思うし、本人も浮気はしないと断言していたから、やはりここは奥田さんの片想いってところか。

「今までの人みたいに、彼女いるならあきらめようとは思わない?」

「何度も思ったんですけど、やっぱり好きなんです」

奥田さんは頬をほんのりと染めて、完全に恋する少女みたいになっている。

そんなに瀧内くんのことが好きなのかな。

会社では護の見ている前で瀧内くんにグイグイ迫っているらしいのに、なんだか意外な一面を見た気がする。

ちょっと調子に乗って娘に初恋の人のことを根掘り葉掘り聞き出して冷やかす母親みたいな気持ちになってしまう。

「その人のどんなところが好きなの?」

「優しいんです。困ったときに何度も助けてくれて……」

優しいって、瀧内くんが?

奥田さんを生理的に受け付けないとまで言っていた瀧内くんが、惚れられるほど何度も優しくできるものなのかな?

「助けてくれたって、例えば?」

「電車で痴漢にあったときに庇ってくれたり……第3倉庫の蛍光灯が切れて守衛室に行ったら、たまたまそこにいただけなのに一緒に行って蛍光灯を替えてくれたり……会社帰りに知らない男の人に絡まれて強引に連れて行かれそうになったところを助けてくれたり……。何度もそんなことがあって好きになっちゃって、思いきってお礼に食事でもって誘ったらお酒も入っていい感じになって、そのまま……」

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