社内恋愛狂想曲
こじらせた想い
午前の仕事を終えて昼休みに入ると財布とスマホを持って大急ぎで席を立った。

隠しておくとろくなことないなんて言っていたし、伊藤くんが周りの人におかしなことを言い出す前に、しっかり口止めしておかなくちゃ。

そう思って小走りで社員食堂に辿り着いたのに、お腹を空かせた社員たちで混雑し始めても伊藤くんは現れない。

今日の日替わり定食は人気メニューの和風ハンバーグと水菜のサラダだから、早く食券を買わないと日替わり定食が売り切れてしまう。

食券を先に買っておくべきだったなとか、そろそろ日替わり定食のボタンに売り切れランプが点くんじゃないかと券売機の方ばかり気にしながら待っていると、誰かに後ろから肩を叩かれて口から心臓が飛び出そうになった。

最近このシチュエーションが多すぎて心臓に悪い。

一方的に待ち合わせなんて言っておいて遅れてくるとは何事だと腹を立てながら振り返ると、私の肩を叩いたのは伊藤くんではなかった。

「あれ……葉月?」

「伊藤から伝言頼まれたんやけど、昼休みの直前に電話がかかってきたから遅くなってもうたわ。ごめんな」

葉月は相当急いで来た様子で、少し息を荒くして肩を軽く上下させている。

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