社内恋愛狂想曲
「いきなり何言うてんねんって思うてるやんな。こんな話すんの、なんか恥ずかしいっていうか、ゆっくり話す機会もなかなかなくて、志織にも誰にも言うてなかったけど……大阪からこっちに来た友達のこと……覚えてるやろ?」

「ああ、うん。バーベキューに誘ってもらったね。すっごく楽しかった」

葉月には仕事の都合や結婚などを機に大阪からこちらに移り住んだ友達が数人いて、わりと頻繁に時間を見つけてはみんなで会って食事をしたりお酒を飲んだりしている。

私も一度、その集まりのバーベキューに招待してもらったことがあって、みんなとても楽しくていい人たちだった。

「その中におった幼なじみのシゲがな……結婚しようって……」

「えっ、茂森さんが?!」

茂森(しげもり)さんというのは、葉月の小学生の頃からの幼なじみで、実は3ヶ月ほど前から付き合って欲しいと言われていたそうだ。

気心の知れた幼なじみだとずっと思ってきたから今さら異性として見られないし、大事な幼なじみだからこれからも友達でいて欲しいと断ったけれど、茂森さんはその後も変わらず優しく接して、葉月の気持ちが自分に向くまで待つつもりだと言ってくれたらしい。

しかし半月ほど前、二人だけで会えないかと呼び出され、大阪支社に異動することが決まったと告げられたのだという。

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