社内恋愛狂想曲
それからしばらくの間、食事をしながらビールを飲んで話した。

葉月は昼休みとは別人のように、いつも以上に饒舌になって、しゃべりながら早いペースでビールを注いだグラスを空ける。

大阪から出てきた友達はみんな“今度”と“次”の電車のどちらが先に来るのかわからないとか、あの上司がダジャレを言うたびに面白くなさすぎて鳥肌が立つとか、話す内容は本当に他愛ないことばかりだけど、本場大阪仕込みの話術で笑いを誘った。

そして1時間も経つ頃には葉月はすっかり出来上がり、呂律もあやしくなってきていた。

お祝いにとことん飲もうとは言ったけど、これはさすがに無茶な飲み方だ。

無茶というよりは、むしろ飲み方も話し方も相当無理しているように見える。

「葉月、大丈夫?ペース早すぎるよ」

心配になって私が声をかけると、葉月はビールを飲みながら腕時計に目を凝らした。

「そんなことないって……さっき飲み始めたところやんか。まだ5分やで?私、まだそんなに飲んでへんやろ?」

完全に酔ってるな、こりゃ。

今まで何度となく一緒にお酒を飲んできたけど、葉月がペースも考えずこんな風に酔うのは珍しい。

そういえば葉月は普段から自分の恋愛の話をほとんどしないけど、酔うと少しくらいは話したりするんだろうか?

< 150 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop