社内恋愛狂想曲
私が先手を打ったからか、葉月は腕組みをして首を左右に揺らしながら、少し困った顔をしている。

「んー?恋かぁ……。私の恋の話なんか笑えんし、いっこもおもんないからなぁ……」

「いやいや、笑える恋ってどんな恋よ?そこに笑いは求めてないから」

「いや……マジで、笑えんのよ」

葉月が急に真面目な顔をしたのでなんとなくわかった。

笑えないのは面白おかしいネタがなくつまらないからではなくて、どうやら何か深刻な事情があって笑えないらしい。

「もしかしてDV男とか借金持ちとか、とんでもない性癖がある人とか……とにかく笑えないような恋愛ばっかりしてきたの?」

「ちゃうわ!!たいした数の恋愛経験はないけど、そんな変なやつとは付き合ってへんよ!私がホンマに好きで付き合ってたのは普通の……っていうか、むしろ周りがほっとかんようなモテるやつやったわ!」

勢いで言い返したものの自分の言葉がよほど恥ずかしかったようで、葉月は赤い顔をしてグラスのビールを一気に飲み干した。

いつものハッキリとものを言うキャラとはずいぶんギャップがあるけれど、葉月は本来、ものすごく照れ屋で恥ずかしがりなのだろう。

それ故になかなか自分の恋について語らないのかも知れない。

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