社内恋愛狂想曲
「じゃあ……橋口より好きになれる人探した方がええんちゃうかな。考えてみ?もし橋口が浮気やめて志織と結婚しても、わだかまりは残ると思うねん。また浮気されるかもとか、ずっと不安になったり疑ったりするで。そんなんで幸せになれると思う?」

「なれない……よね……」

護が浮気をする未来を3年前に知っていたら、私は護とは絶対に付き合わなかった。

それなのに護が浮気をしていると知った今でも、護はこの先もきっと浮気をするだろうと忠告されてもなお心のどこかで、護を信じたいとか、悪い夢だったんじゃないかなんて甘い考えを捨てきれない私がいる。

「護とならきっと幸せになれると思ったんだけどな……」

情けない声でそう呟くと、初めて好きだと言ってくれた日の護の笑顔が脳裏によみがえって、目の前がじんわりとにじんで、鼻の奥がツーンと痛くなった。


私が入社4年目の秋に商品管理部に異動した後、護が同じ営業部にいた時よりも頻繁に声を掛けてくるようになった。

何度も声を掛けられるうちにだんだん護のことが気になり始め、やがて一緒に食事をしたりお酒を飲みに行ったり、二人で過ごす時間が増えるのに比例して、どんどん護を好きになった。

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