社内恋愛狂想曲

「おい葉月、起きろ。自分から一方的に呼び出しといて、なにを勝手に寝てやがる」

伊藤くんは葉月の頬を両手でムニムニとつまんだり引っ張ったりしている。

私と三島課長は何事かと驚き、思わずお互いの顔を見合わせた。

……何これ、どういうこと？

伊藤くんは葉月を呼び捨てにするほど仲が良かった？

それに一方的に呼び出したってなんだ？

頭の中に散らばったたくさんの点と点が繋がって線になっていく映像が浮かんだ。

どこかで聞いたような気がすると思っていた話って……。

「あっ……まさか……！」

私が思わず声をあげるのと同時に、葉月が目を閉じたまま伊藤くんの手をつかんだ。

「んー……ほっぺ痛い……」

「やっと気がついたか、この酔っぱらい」

ようやくうっすらと目を開いた葉月が、伊藤くんの顔を見た瞬間大きく目を見開いて、伊藤くんの手を払いのけた。

「……なんでおるん?!」

「自分が呼んだんだろ」

「私、アンタなんか呼んでへん」

「呼んだっつーの！未来の嫁を迎えに来いって言ったの自分だろ」