社内恋愛狂想曲
この様子では簡単に話は収まりそうにないし、こんなところで口論していては、お店にも周りのお客さんにも迷惑がかかってしまう。

「葉月も伊藤くんも一旦落ち着いて。とりあえずお店を出よう」

「そうだな。木村、立てるか？」

三島課長が葉月に手を貸そうとすると、伊藤くんが突然葉月を担ぎ上げた。

「わっ、ちょっと！何すんのよ！」

「うるさい、酔っぱらいは黙ってろ。三島課長、歩かせてたら夜が明けます。車までこれで行きましょう」

「お……おう……」

伊藤くんは葉月を担いで躊躇することなく店の中を歩いていく。

葉月は足をバタバタさせて、離せとか降ろせとか、伊藤くんに悪態をつく。

周りの視線がかなり痛い。

私はレジで会計を済ませ、そそくさと店を出た。

店の前にはハザードランプを点滅させて、ワンボックスカーが停まっている。

車の中では瀧内くんがうんざりした顔で待っていた。

三島課長は運転席に座り、私を助手席に乗るよう促した。

伊藤くんは葉月を後部座席に座らせてシートベルトをしめ、そのすぐ隣に座る。

完全に臨戦態勢だ。

< 171 / 1,001 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop