社内恋愛狂想曲
エレベーターの扉が開いて中に乗り込んでも、護は私の手を離さない。

なんだか今日の護はいつもと様子が違う気がする。

エレベーターを降りると護は強い力で私の手を引いて部屋の前まで歩いた。

「護……手、痛いんだけど……」

「ああ、ごめん」

護はようやく私の手を離し、今度は玄関のドアをじっと見ている。

待たせてしまったことをかなり怒っているのか、それともよほどお腹が空いているのか、早く玄関の鍵をあけろと急かされているような気がした。

鍵をあけて部屋の中に入り、ダイニングのイスに荷物を置いて、カウンターの上に置いてあるシュシュで髪をまとめキッチンに直行する。

料理をするにしても本当は一休みしたいところだけど、これ以上時間が遅くなるのも困るので、迂闊に座ってしまって腰が重くなる前にキッチンに立って、何か作ってしまうことにした。

手を洗って冷蔵庫のドアを開け、適当な食材はないか見てみると、卵とハムが入っていた。

冷凍庫にはごはんと刻みネギもあるし、棚の中に鶏ガラスープの素と乾燥ワカメもあるから、チャーハンとスープくらいは作れそうだ。

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