社内恋愛狂想曲
「あ……りがとう……」

「佐野主任って仲のいい同僚が付き合ってても気付かないし、浮気されても目撃するまで気付かないし、もし誰かにものすごく好かれたり嫌われたりしていても全然気付かないんでしょうね。そういうところが気楽そうで本当に羨ましいです」

気楽そうで羨ましいって……それは遠回しに、単純でバカだってけなしてるのか……?

私の方が3つも歳上なのに、なんだかものすごく子ども扱いされているような気がするけれど、ここで声を荒らげるのは大人げない。

「瀧内くん……それは誉め言葉かしら?」

少し皮肉っぽく言ってやったつもりなのに、瀧内くんはいつもよりわかりやすく笑ってうなずいた。

「もちろんですよ。僕にはない部分なので、女性として理想的ですね」

理想の女性じゃなくて、女性として理想的?

瀧内くんの言いたいことはよくわからない。

普段一緒に仕事をしていても見られない一面なのか、伊藤くんも驚いているようだ。

「瀧内……もしかして歳上好きか?」

「そうですね。アレしてコレしてってうるさい小娘よりは、落ち着いた大人の女性が好きですよ」

「ほぉー……」

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