社内恋愛狂想曲
瀧内くんに振り回されているときの三島課長は、気位の高い猫のわがままに翻弄されながらも幸せそうな優しい飼い主を連想させる。

「ところで佐野主任、早く帰りたいのでいい加減本題に入っていいですか?」

「あっ、そうだった!ごめんね」

さっきも三島課長の話をするために来たんだと瀧内くんに言われたのに、私の話に時間を費やしてしまった。

今度こそはちゃんと話を聞かないと。

「なぁ、さっきから思ってたんやけど、三島課長の話って何?三島課長、なんかやらかしたん?」

葉月が尋ねると、瀧内くんは軽く首を横に振った。

「あの人はそんな人じゃありませんよ。じゃあ木村先輩にもわかるように説明しますね」

瀧内くんは何も知らない葉月のために、バレーボールサークルの話から始め、三島課長が親から結婚を急かされていることや、花嫁候補に名乗りを上げた20歳の女の子に何度断っても迫られ続けていることを話した。

「お見合いしろとか付き合ってくれと言われても三島課長にはその気はないので、手っ取り早くあきらめてもらうために婚約者がいることにすればどうかという話になって、だったら作り話だけじゃなく誰かを婚約者に仕立て上げて紹介したらいいんじゃないかという結論に至ったんです」

瀧内くんの話は昨日三島課長から直接聞いた話とほぼ同じだった。

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