社内恋愛狂想曲
片手に私の腕、もう片方の手には私の荷物を持ち、瀧内くんは私を引きずるようにしてリビングを出て廊下を歩き、玄関へと向かう。

なんなの?このドッキリみたいなハチャメチャ展開は?!

タネ明かしはまだ?!ホントもう勘弁して!!

「いい加減にしろ、玲司!佐野が困ってるだろう!」

慌てて後を追ってきた三島課長が珍しく声を荒らげ、瀧内くんの手から引き離した私の腕を強い力で引き寄せた。

その弾みで私の体はポスンと三島課長の腕の中におさまる。

「なに?僕に志織さんを取られたくないの?」

「……佐野はおまえのものじゃない」

「ふーん……?曖昧な言い方だけど、まぁいいか。おじさんにああ言った手前もあるし、みんなもいるから今日のところは引いてあげてもいいよ」

瀧内くんは挑発的な口調でそう言って、スタスタとリビングに戻っていく。

三島課長と私は呆気にとられてその背中を眺めていたけれど、三島課長は我に返ると私を抱き寄せたままであることに気付き、慌てて手を離した。

「なんかもう……重ね重ね本当に申し訳ないけど……今日から俺の婚約者になってくれるか?」

なかなか変わった言い回しだけれど、しばらくの間、例のバレーサークルに参加するときと、ご両親の前でだけ婚約者のふりをすればいいんだよね?

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