社内恋愛狂想曲
「僕のことも“玲司”って呼んでくださいね、志織さん?」

「は、はい、わかりました、玲司くん」

「じゃあ次は“志岐くん”」

「し……志岐くん……」

他人事だと思って、伊藤くんはおかしすぎて声にならないほど笑っている。

「やればできるじゃないですか」

瀧内くんは口元に意地の悪い笑みを浮かべて、ようやく私から顔を離した。

「じゃあ次はちゃんと本人の顔を見て、“潤さん”」

瀧内くんに促されるまま三島課長の方を見ると、三島課長と思い切り目が合った。

「……潤さん……」

「は、はい……」

私が思い切って名前を呼ぶと三島課長が思わず返事をしたので、伊藤くんと葉月は我慢できずに声をあげて笑いだした。

「……おまえら、笑いすぎだ」

「志織さんがこれだけ頑張ってるんだから、潤さんも頑張らないと」

瀧内くんにたしなめられて、三島課長は観念したように大きく息をついた。

「……明日、一緒に映画観に行こうか……志織……」

「はい……」

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