社内恋愛狂想曲
作ったこともないような横文字の料理が得意だと見栄を張っても仕方がないので、ここは正直に自己申請しておく。

いきなり女子力の低さが露呈してがっかりされるかと思ったけれど、予想に反して三島課長は嬉しそうだ。

「気が合うな。俺も気取った料理よりも、普通の家庭料理の方が好きなんだ」

「ちなみに潤さんの得意料理は何ですか?」

私が尋ねると、三島課長は少し首をかしげて考える。

「俺はいつも名前もないような炒め物とか、あるもので適当に作るから、何が得意とかはない」

「私と同じですね」

きっと世の既婚女性たちの大半は、食べるだけじゃなく自分で料理を作れる三島課長みたいな男性が、夫として理想的だと言うだろう。

それもここぞと言うときだけ張り切って豪勢な料理を作るのではなく、普段から生活の一部として当たり前に作る人がいいと言うに違いない。

それを考えたら、三島課長はまさしく理想の夫像みたいな人なんじゃないか?

普段から食いしん坊のあの二人を満足させている三島課長なら、きっと在り合わせでも美味しいものを作るのだろう。

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