社内恋愛狂想曲
思えばずっと護にはほったらかしにされていたし、男性からこんなに優しくされたのは本当に久しぶりだったから、私の中の女心が急激に昂っているんだと思う。

だけど私にはまだきちんと別れていないどうしようもない彼氏がいて、三島課長には何年も想い続けているほど好きな人がいる。

三島課長がどんなに素敵な恋人を演じてくれたとしても、それだけは何があっても忘れないようにしなくてはと、ほだされそうになる自分の心を戒めた。


海辺の夜景を見ながらの散歩を堪能したあと、私たちは瀧内くんがチケットをくれたディナーのためにレストランへ足を運んだ。

案内されたのは大きな窓際の特等席で、先ほどとはまた違った夜景を見ながらゆっくりディナーを楽しむことができた。

楽しみにしていたカップル限定のデザートは、甘酸っぱいラズベリーソースのかかったフロマージュで、愛らしいハート型の飴細工があしらわれ、二人分がひとつの器に盛り付けられていた。

今時の女子ならSNS映えを狙ってスマホのカメラを向けてしまうのだろうけれど、SNSに興味のない私は、その美しさと愛らしさを堪能したら、カメラをかざすこともなくふたつのお皿に丁寧に取り分けた。

「これを出してもらえるということは、私たちもちゃんとカップルに見えるってことですかね?」

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