社内恋愛狂想曲
飴細工かソースか、それともいきなりフロマージュか、どこから手をつけようかと思いながら何気なくそう言うと、三島課長はエスプレッソの注がれたデミタスカップを口に運びながらおかしそうに笑った。

「誰がどう見てもカップルだと思うけど?」

入店の際に「カップルですか?」と聞かれたわけでもないけれど、もし尋ねられたとしても、「いえ、偽物です!」とは答えない。

店側としては男女が一緒に食事に訪れたらカップルだと認識するのだろう。

三島課長もそれを言っているのだと思う。

本物の恋人ではない三島課長と一緒に食べても、スウィートラバーズと名付けられたフロマージュはとても美味しかった。


ディナーを終えてレストランを出たあと、中村さんのお店に寄って預けていた荷物を受け取り、そのまま駅に向かった。

自分で買ったものだから自分で持つと断ったけれど、三島課長は私に自分のシューズが入った袋と交換しようと言って、私の買った重い荷物を持ってくれた。

見た目がいい上に誰に対しても優しいのだから、男女問わず慕われるだけでなく、婚約者になりたいと立候補するモナちゃんみたいな女の子がいるのもわかる気がする。

会社では三島課長の浮いた話は耳にしたことがないけれど、きっと私が知らないだけで、かなりモテるに違いない。

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