社内恋愛狂想曲
「明日は練習初参加だな」

「そうですね。ちょっと緊張します」

「緊張しなくていいよ。歳とか職業なんかはバラバラだけど、みんなユルくやってるから」

初対面の人たちの中に入っていくことももちろん緊張するけれど、一番緊張するのはうまく婚約者のふりができるかということだ。

初回でいきなり嘘がバレたらと思うと気が気でない。

「初めてっていうのももちろんなんですけど……」

私がそこまで言うと、三島課長は私の不安を察してくれたようだ。

「ああ……婚約者だってことはみんなに何か聞かれたら俺が言うから、志織は心配しなくていいよ。玲司と志岐もうまく話を合わせてくれると思うし」

「うまくいくといいですね」

駅までの道のりを、他愛もない話をしながら手を繋いで歩いた。

今日一日で三島課長と手を繋ぐことにも、“潤さん”と呼ぶことにも、少しは慣れた気がする。

駅に着くと、駅構内は人の群れでごった返していた。

「やけに人が多いですね」

「なんだろう?土曜の夜とはいえ多すぎるな。何かあったのかな」

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