社内恋愛狂想曲
おまけに乗っている電車が特急なのでなかなか扉が開かず、まるで抱きしめられているような状態が長く続き、鼓動がどんどん速くなって、人混みの中の息苦しさとはまた別の息苦しさを覚える。

「大丈夫か?顔色悪いぞ」

「はい、なんとか……。でもこんなに体重かけられたら重いですよね、すみません」

「俺は全然平気。心配しなくてもそれなりに体は鍛えてるから大丈夫だ。つらかったらそのまま俺に寄りかかってていいよ」

ほらまた、さらっとそういうイケメンみたいなことを……!

こんな状態でも葉月に養われたツッコミ力が働いて、心の中で思わず「惚れてまうやろー!」と叫ぶ。

この人はきっと相手が私でなくても、誰に対しても無自覚のうちに底抜けの優しさとイケメンなセリフを発動させるのだろう。

そうとでも思っていないと、この息苦しさも手伝って、酸欠状態の脳が何やら良からぬ勘違いを起こしてしまいそうだ。

電車を降りる頃にはかなりぐったりしてしまったけれど、なんとか無事に私の家の最寄り駅に着くことができた。

今日は電車だからここで別れるのかと思っていたら、三島課長は私の体を気遣いながら手を引いて歩き、なんの迷いもなく私と一緒に改札口を出た。

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