社内恋愛狂想曲
「あれ?なんで潤さんまで改札出ちゃったんですか?」

「なんでって普通に家まで送るつもりだけど?もう遅いし荷物もあるし……デートだし」

車ならともかく、家の方向も全然違うのに、電車で出かけても家まで送ってくれるなんて……!

三島課長は上司なのに、婚約者とはいえ偽物で部下の私にまでこんなに気を遣ってもらったら、ありがたいを通り越してなんだか申し訳ない気がする。

「なんかすみません、気を遣わせてしまって」

「おかしなことを言うんだな。別に謝るようなことじゃないだろ?それより体はもう大丈夫か?家まで歩ける?」

「はい、大丈夫です」

三島課長は私の手を引いてゆっくりと歩き始めた。

大丈夫だと言っても、私の体を気遣ってくれているのがわかる。

もう混雑した電車からは降りたのに、なぜか私の息苦しさはなかなかおさまらず、鼓動も速いままだった。

駅から自宅に向かう途中にある大きな公園に差し掛かると、三島課長は足を止めて振り返った。

「喉が渇いたから少し休憩しようか。ちょうどそこに自販機もあるし」

「そうですね」

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